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展望:活躍できる未来をデザインする

 

このコラムでは、ITストラテジストである筆者・田部良文がIT業界の課題と展望について書いております。今回が最終回です。4回の構成で、以下のテーマで執筆してまいりました。

 

1.肯定できない日本の状況

2.肯定できない日本のIT業界の状況

3.IT人材のSWOT分析

4.展望:活躍できる未来をデザインする

 

このコラムは、日本企業の時価総額の記載から始めました(肯定できない日本の状況)。あんなに頑張っているのに世界の中で負けています。「あんなに頑張っている」というのは主観的な表現ですが、いくつかのデータを見ても明らかです。専門誌の数年前のアンケートでは、SIerの平均月間残業時間が80時間程度だったと記憶しております。

 

卑近な例で恐縮ですが、私の務めた部署は100~150時間、もしくはそれ以上にはなっていました。しかも、携帯と社内PHS電話の2台持ちでメールでも対応すべき案件がどんどん舞い込んできたので、隣の席のメンバーと5分程度の打合せをするのもアポを取る必要があるほど、皆が忙しくしていました。トイレ休憩すら取りたくても取れない、まるで株のディーリングルームとか安居酒屋のゴールデンタイムかのような状況でした。

 

そしてそんな状況が一日中続いたあと、19時ごろ外出先から会社に向かうバスに乗りながら、「あと5〜6時間くらいで終わるかな?終わらせたいな。」とよく思ったものです。そうして帰社してみると、重要で難易度が高く、緊急性の高い仕事がメールで入っていたなどということも頻繁にありました

 

当時は同様の会社は他にもたくさんありました。あるとき聞いたエピソードでは「前のめりに気を失う分にはまだまだ大丈夫。そのまま横に倒れると、少し休ませようかとなる」とのことでした。こうして現場社員が犠牲を払いつつ頑張って作った利益を投資に回していればもう少し違った今があると思うのですが、それができている会社は非常に少なかったと思います。

 

周りを見渡してみると、銀行やコンサル、株主などの外部の目が光る立場の会社になって初めてトライアンドエラーを許容するチャレンジングな施策を実行している会社のように見えました。多くの場合、サラリーマンとして長く働いてから経営者になるため、「お金と労働」が強く結びつくメンタリティーへと偏って育ってしまい、「お金でお金を作る」とか、「借金をして投資する」ということに二の足を踏んでしまうのだと思います。こうして、国際競争力は低下してしまったのです。

 

とはいえ、執筆している2017年12月においては、明るいきざしをたくさん見つけることができます。

 

例えば、

●ROE重視の経営にシフトしてきている点

経済産業省は「伊藤レポート(※1)」の中で、持続的成長につながるコーポレートガバナンス(企業統治)改革の文脈から、ROE重視の経営にシフトするように説いています。

 

その中で「グローバルな投資家と対話をする際の最低ラインとして8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきである。」とあり、従来の経営スタイルでは到底つくることができないので、チャレンジングなプロジェクトを推進していかなければならなくなっています。

 

●機関投資家の関与増大

金融庁が「責任ある機関投資家の諸原則(日本版 スチューワードシップ・コード」(※2)を策定したことにより、これまで経営者に白紙委任していた機関投資家も株主としての権利を行使し、経営の健全化に関与するようになってきました。当然、時価総額やROEでの要求が高くなり、守りだけの経営ではいられなくなるでしょう。

 

●働き方改革(※3)

長時間労働是正の圧力により、社員を無尽蔵に働かせることが出来なくなってきました。生産性を急上昇させる必要があります。「サービス残業」のような、これまで捕捉できていなかった労働時間まで含めると、経営へのインパクトはかなり大きいと思われます。

 

●副業促進(※4)

労働者の持てる力と時間、忠誠心を最大限会社のために使っても、経営者がチャレンジしないので、国際競争力が落ちる一方でした。そこで、その時間とモチベーションを労働者に返して、好きな事業を始めてもらおうという流れだと私は解釈しております。ガレージから世界的な企業に育った米国のいくつかの企業のような事例を期待しているのでしょう。

 

●完全失業率低下

このグラフをご覧ください。

 

 

2017年2月から(6月を除いて)ずっと完全失業率2.8%が続いています。1993年以来24年ぶりの低い水準を記録しています。ここまでの失業率の低下は、企業の在庫が減り、稼働率を上げ、パートタイム労働者を正社員化し、定年延長をし、結婚を機に退職した女性社員の復職も行った上で、やっと起こることで、景気回復の最終段階まで来ていると思われます。もうすぐ、以下のようなことが起こると予測できます。

 

①人材獲得のために提示する賃金を上げざるを得ない。するとすでに雇用している全社員の賃金を上げざるを得ない。

 

②労働者の賃金を上げると、GDPの6割を占める民間最終消費支出(2015年は約300兆円)が上昇し、かなりのインパクトで景気への上昇圧力をもたらします。

 

③賃金を上げると、人件費の圧縮に頼って黒字を作ってきた会社が、挑戦的なプロジェクトの実行をせざるを得なくなる。おそらくこれまでのスタイルから抜け出せない経営者を交代させてでもチャレンジさせることになります。

 

④社員の雇用を維持するために、社員のやりがいとかキャリアアップも真剣に向き合う必要が出て来て、アイデアや能力を適切に評価するようになる。

 

もちろん失敗もあるでしょうが、成長が実感できる会社が増え、総じて景気は上昇していくでしょう(※5)。さらに、IT業界においては経済産業省の2016年の調査(※6)によると、2020年のIT人材の不足が36.9万人と予想しております(※7)。さらに高待遇が期待できるといえるでしょう。

 

●AI/IoTビジネスの射程の広がり(※8)

AI/IoTビジネスのブームにより、切り口の一つとして、様々な業界にも浸透していき、活躍できる場面が増えてきます。ひょっとしたらIT業界というカテゴリーは無くなるかもしれません。

 

他にも、クラウド活用による初期投資の低下や、セキュリティ市場の活性化(サービスの有償化)、オリンピック特需、PythonやRなど無償ツールやラズパイなどの低価格コンピューター、3Dプリンタ等など、チャレンジしやすい明るいきざしばかりです。 皆さん、舞台は整いつつあります!

 

 

前回のコラムで、IT人材は業務知識、フローの可視化、情報の流れの把握、ファシリテーションスキル、マネジメントなどの強みがあることに触れました。さらに、前述したように明るいきざしのある中では、独立して稼ぐことも現実的な選択肢に思えてきます。

 

一般に起業は千のうち三つくらいしか成功しないので「センミッツ」と言ったりします。「失敗する」と言っておけば99.7%の確率で当たるので、他人の起業については表面的なことだけを聞いておいて判断することが横行します。良い結果が出た時だけ褒めれば関係も悪くならない。経営者をしている私の友人は独立の際に十人に相談したところ、十人全員が反対したと言います。たいていの場合、「あなたのためを思って」と親切心からアドバイスしてくれるので、ぞんざいに扱うわけにもいきません。コーチングの世界ではこういう人たちを、「ドリームキラー」と呼ぶそうです。(対策は、「自分の夢を他人には語らないこと」らしいです。)

 

しかし、起業が困難であることは現実です。大企業にいればモビルスーツに守られて仕事ができますが、起業は素手で武器を一つ一つ獲得し戦っていかなければならない苦労があるのは事実です(※9)。資格等でナイフくらいは手に出来るかもしれませんが、ピストルが出てきたらおしまいです。

 

その上で独立起業を考えると、高揚感という貴重な報酬が得られるのが一番のメリットだと思います。起業を目指される方は、まずは事業計画書を作成してみてはいかがでしょうか?総務省から「事業計画作成とベンチャー経営の手引き」という素晴らしい資料が出ておりますので、ご一読されると良いと思います。

 

すでに多くの場で言われてきたことですが、日本人の横並びのメンタリティーは課題になっております。世界で活躍するなどということは、考えてもいけないような雰囲気があります。そんなことを目指すような構想を話題にするだけで、まともな大人ではないと嘲笑の対象になったりします。まさに「ドリームキラー」の餌食になります。しかし、これを見て下さい。

 

 

総務省統計局のページの世界のGDPランキングの中に、日本の都市をプロットしてみました。関東圏だけで、(EUを含めて)世界第9位の経済圏となります。また、東京は一国と同じくらいの経済規模を一つの都市だけで誇っております。関西の各都市も北欧の地域と変わらない経済規模があります。つまり、世界的なモノやサービスを生み出している国々と比較して日本は圧倒的にパワーのある経済圏のプレーヤーなのです。あなたの住んでいる場で立ち上げたビジネスが、世界的なものに育つことも十分考えられることなのです。

 

さて、これまで4回にわたって、「IT業界の課題と展望」というテーマでコラムを書いてまいりました。「展望:活躍する未来をデザインする」というのが当初のテーマでしたが、具体的なものよりも、そのベースの話題に終始してしまいました。具体的な未来像は、ぜひ読者の皆さんがご自身の手でデザインしてください。

 

前半は現状のマイナス面を取りあげましたが、後半は未来に目を向けることで非常に期待ができる話題に触れられたと思います(※10)。

 

この一連のコラムではチャレンジしない経営者を仮想敵にして話を進めましたが、それはもちろんマクロでの話です。ミクロでは胃が口から飛び出るかと思うくらいのプレッシャーを感じて、それを乗り越えてきた立派な創業社長もたくさんいらっしゃることも付け加えておきます。経営者を神格化しないために、また、現場の頑張りを肯定するために、あえて対照的な表現方法を取らせていただきました。

 

さあ、皆さんは、どのような未来をデザインしますか?

 

 

(※1-1)伊藤レポート「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト「最終報告書」を公表します。

 

(※1-2) ESGと無形資産投資に関する初めての体系的な手引きと政策提言を取りまとめました~「伊藤レポート2.0」発表~

 

(※2)スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会

 

(※3)厚生労働省 長時間労働削減に向けた取り組み

 

(※4)厚生労働省 柔軟な働き方に関する検討会

 

(※5)朝鮮半島情勢次第で、この辺りの話は無くなる可能性があります。

 

(※6)経済産業省 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を取りまとめました。

 

(※7)IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を取りまとめました

 

(※8) 例えば以下のような射程があります。

産業構造審議会 「新産業構造ビジョン」⼀⼈ひとりの、世界の課題を解決する⽇本の未来

 

(※9) 日本交通会長の川鍋氏の表現を使わせていただきました。

 

(※10) 下記の資料も参考になります。

経済産業省 次官・若手プロジェクト「不安な個人、立ちすくむ国家〜モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜」

 

 

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