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このコラムでは、ITストラテジストである筆者・田部良文がIT業界の課題と展望について書いております。第一回のコラムでは、「肯定できない日本の状況」と題して、日本の企業が時価総額の点で圧倒的に弱いこと、その一因が適切な投資がなされてこなかったことであると指摘しました。第二回では、「肯定できない日本のIT業界の現状」と題して、IT業界でも例に漏れず適切な投資がされていないこと、マネタイズの仕組みがアンバランスなものとなってしまい、貢献利益の追求に繋がらなくなっていることを指摘しました。

 

第三回では、IT人材個人にスポットを当てて、強みや弱みにはどのような特徴があるのか、何が重要成功要因につながるのかを探っていきたいと思います。

 

 

 

強みや弱みは他との比較によって決まる相対的なものであるため、外部環境の変化に応じて変わるものです。自分の強みや弱みの変化が外部環境に影響を与えることができるような独占、寡占的な企業(※3)もありますが、そうでない場合は、他律的な概念であるといって良いでしょう。

 

ただしこれは、強みや弱みというものは外部の覇権的な存在が決めて美味しいところは持って行ってしまい、残ったパイの食い合いを必死にする必要があることを示しているわけではありません。戦略立案時の工夫により、全く違ったプレイヤーになることができます。企業に限らず、個人レベルでも同様です。

 

 

 

戦略立案は未来のイメージをしっかりと膨らませるところから始めることが大切です。このコラムでは、理解しやすいように「肯定できない現状」という「現状」の記述から入りました。それは、現状の課題認識を共有したいと思ったからですが、実のところ筋の良い順番ではありません。

 

 

現状分析から入ると以下のようなデメリットがあります。

 

1.現状の延長でしかものを考えられなくなり、大きな変化には対応できなくなってしまう。
2.戦略目標を達成した時には、そもそもその目標自体の意味が薄れ効果がなくなってしまう。
3.今見える表面的な課題に目が行き、将来に渡って最もコアな課題を発見しにくい。
4.日本の大企業は一部を除いて様子見が多いため、ゼロサムゲーム(※4) の時代であるにもかかわらず、ゼロかサムの残りカスのような目標を採用する傾向が強い。
5.茹でガエルの発想になってしまう。

 

そこで、私が提案するのは、以下のような手順を採用することです。私はこれを「未来デザインメソッド」と呼んでいます。

 

1.まず、自分たちが活躍する都合の良い未来を描く。(妄想でOK。ただし、この場合の「活躍」は理念からブレないほうがいいですね。)
2.現状とのギャップを見つけ課題として認識する。
3.解決策を探る。

 

 

2番目以降は通常の流れですが、1番目でどれだけ魅力的な未来を描けるかによって、内発的な動機の醸成や、未来の市場創出のアイデアが生まれてまいります。この辺りの話は、「ビジョン策定」という言葉で語られたりする場合もあり、他にも様々な文脈で研究されていると思います。私としては、自身が未来に主導的に関わるプレイヤーであることを想起させる「未来デザイン」という用語の方がしっくりくると思って採用しております。

 

さらにもう一点重要なことを付け加えておきます。時間軸を取り入れて動向に敏感になる必要があることです。もし、2番目のフェーズで外部環境(PEST等)分析や内部環境(SWOT等)分析をするとしたら、その中で、可変になる項目について意識的に分析する必要があります。例えば、「新興国の台頭によって外部環境がどう変わり、自分たちの強みはどう変わるか?」などを意識的に数多くシミュレーションしていくのです。AIやIoTのように、社会や産業、企業や人のあり方や働き方を大きく変化させるインパクトの大きいファクターを考えると、かなり多様な未来を描けるのではないでしょうか?

 

以上のようなところに注意して、戦略の立案をしていくと、自身の未来について主導的に関わっていけることになると思います。

 

なお、筆者が設立したシンクタンク「ILRI(IT and Law Research Institute)」では、未来デザインメソッドによる戦略立案支援サービスをご提供しております(※5)

 

 

 

IT人材の実態における一般的な側面については、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)IT人材育成本部による『IT人材白書2017 デジタル大変革時代、本番へ~ITエンジニアが主体的に挑戦できる場を作れ~』(※6)などに詳述されております。

 

ここでは、筆者の経験をベースにIT人材のSWOTを考えてみたいと思います。ここでは特定のモデルがいるわけでなく、IT業界に身を置くことで身に付く点について記載しました。

 

<強み(Strengths)>


●業務知識が身についている。
法律家は法律を通して、専門にしている業界の事情に精通しています。そうでなければ、契約書作成にも訴訟にも十分に取り組めません。会計士も企業実務がわかっているので、監査で踏み込むことができます。ITエンジニアも同様で、実際の業務がわかって初めてシステムを設計することができます。経験豊かなIT人材は、IT業界以外の業務にも詳しいものです。

 

●見えないものを記述するスキルがある。
フローチャートなどで業務の流れを可視化する訓練を経ています。

 

●情報の流れを知っている。(お金の流れも知っている。)
上記3つのポイントで、企業・組織の概要が把握できます。

 

●要望の取りまとめ、ファシリテーションのスキルがある。
要望収集はデルファイ技法を使ったり、グループワークを行ったり、要求定義、要件定義、基本設計〜等をシステマティックに行ったりと、大人数の要望を整理し実現するスキルがあります。しかも、トップダウンで整理するのではなく、顧客側の未整理で奔放で、そして厳しい要望をなんとか取りまとめてきた経験のあるベンダー側エンジニアも多くいます。

 

●プロジェクトマネージャ(以下PM)クラスだと、マネジメント手法が確立していて、圧倒的に優秀な人材と言えます。
事業推進ができる存在と言えます。IT業界から離れて、花見でもマラソン大会でもマネジメントできるスキルですので、IT業界人であればPM手法をぜひ学んで欲しいと思います。さらに言うと、私は大学の一般教養科目に入れて欲しいと思っています。

 

 

<弱み(Weaknesses)>

 

●いびつな業界構造で、自浄作用はなかなか働かない
IT業界の多重下請け問題や、企画立案フェーズでの投資の少なさなどの問題は、なかなか解消されずにおります。

 

●評価が低い(単価、社内での立場)
欧米に比較して給与が低い(日本のプログラマーの平均給与4,083,500円に対し、米8万4360ドル(※7) 、日本のSEでは5,923,300円であるのに対し、米アプリケーションエンジニアは10万2160ドルとなっており大きな開きがある。参考までに、韓国のプログラマーは4万3377ドル (※8))。
また、社内で事業革新の役割より、お守りの役割しか与えられていないことがよくあります。

 

●コミュニケーション能力が低い人も多い。

 

●個人のコミュニティが少ないので、専門家のコミットメントも少ない。
業界のオピニオンリーダーとなる有識者はスーパーエンジニアか異端児か、企業の幹部が多く、もっとも多い層の意見が出にくいと思います。2chに書くだけでなく、コミュニティ活動で社会的に関わっていくと良いのですが、あまり多くはないようです。私は日本ITストラテジスト協会というところで活動しておりますが、非常に有意義ですのでお勧めしたいと思います。

 

 

<機会(Opportunities)>

 

●失業率低下による大幅な売り手市場化

2016年時点のアンケートでは、IT企業で大幅に不足していると回答した企業は20.3%、やや不足していると回答したのが66.3%。ユーザー企業では、それぞれ24.7%、59.8%となっている。これは増加傾向ではありますが、あまり大きな意味を感じませんでした。

 

むしろ、その後の労働市場全体の動向が気になりました。2017年は完全失業率2.8%近辺が半年近く続いているので、採用が非常に困難になってきています。IT業界に限らず、給与の適正化や、従業員のキャリアップ、無視してきた正論にも向き合うようにしていかないと、労働者を確保できなくなってくるでしょう。そして、社員の発言力が増すことで現場に押し付けていたひずみが少しずつ正常になってくると思います。まず、システム更新がされるようになり、生産性が上がる。踏み出せなかったIT戦略にも手を出しやすくなることが期待できます。

 

●働き方改革、副業推奨などで、自分の裁量で事業活動に挑戦できるようになる。

これまでは従業員がアイデアを出しても、経営者はリスクを避け、生かそうとせず毒にも薬にもならない施策を取り続け、国際競争力を下げていきました。この働き方改革によって、政府は従業員の労働時間を経営者から従業員自身に返したのだと筆者は解釈しています。これからは、自分のアイデアを自分で実行していける時代になります。この改革で様々な事業が創出され、GDPが上がると期待しています。

 

 

<脅威(Threats)>

 

●自分の仕事の範囲を限定するとスキルアップ機会が減る。仕事のオーナーシップがなくなると一気に価値がなくなる。

 

●デジタルトランスフォーメーションの時代なので、ITの知識だけでは、通用しなくなってくる。

 

●大量のプロが中国/米国で生み出されるが日本では、出来ていない。情報系学科卒業生は日本で1万6338人に対し、中国13万7301人

 

●歯車で居続けると、新興国と同じ市場で戦うことになる。

 

●ハードワークが減ることで、スキル形成が困難になる面もある。

高度成長期の昭和45年の年間労働時間は2239時間であったのに対して、平成27年には1784時間にまで減少しています。働き方改革でさらに減ることが予想されます。新興国のなりふり構わないコンペティター相手に戦っていくには、かなりの制約があると言わざるを得ない状況です。さらに、ハードワークとスキル形成がセットであるカテゴリーが育たなくなってしまう恐れがあります。企業側は従業員にハードワークを求められない時代になったので、従業員自身が取り組みを変える必要があると思います。

 

 

 

こうして整理してみると、SWOT分析によって希望と危機感の両方が見えてきます。しっかりと戦略を立てて取り組む事で成功に結びつけて欲しいと願っています。 今回は「IT人材のSWOT分析」と言うテーマを取り上げました。次回はいよいよ最終回です。テーマは「展望:活躍できる未来をデザインする」と題して、お届けしたいと思います。

 

 

(※3)クープマンの目標値によれば、シェア26.1%が市場に影響を与える水準値とされている

 

(※4)ゼロサムゲームとは、勝者が市場を総取りしてしまうゲームのこと

 

(※5)https://www.ilri-jp.com/

 

(※6)余談ですが、政府の統計や白書などを使って、基本的なデータと体系的なトピックで頭づくりをしておくと、偏らずに済みますし、その後出会った主張の妥当性や信頼性の判断の根拠になりますので、有効です。もちろん政府の発表でも鵜呑みにせず検証すべきですが、基本的なデータや法令解釈の信頼度は高いと言えます。さらに余談となりますが、安全保障のテーマなどは一度目を通したほうが良いでしょう。基本的なデータは多くの示唆を与えてくれます。

 

(※7)『IT人材白書2017 デジタル大変革時代、本番へ~ITエンジニアが主体的に挑戦できる場を作れ~』 p16

 

(※8)(※9)IT人材白書2013、情報通信白書2015より

 

 

 

 

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