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IT業界の「働き方改革」

 

こんにちは!中小企業診断士、ITストラテジストの岸本慎介です。 20年以上プログラマーやシステム開発者としてIT業界を内側から携わり、また2014年には中小企業診断士の登録を受け、IT業界を外側からも分析する機会を得てきました。今回はその経験をもとに、昨今話題になっている「働き方改革」について考えていきたいと思います。

 

 

 

2016年に安倍内閣が「働き方改革実現会議」を立ち上げ、のべ10回の会合が行われました。その第1回会議にて、以下の9項目を議題としていくことが示されています。

 

●同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

●賃金引き上げと労働生産性の向上

●時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正

●雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題

●テレワーク、副業・兼業などの柔軟な働き方

●働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備

●高齢者の就業促進

●病気の治療や子育て・介護と仕事の両立

●外国人材の受入れの問題

 

前提として、少子高齢化による生産年齢人口の大幅な減少、非正規雇用の増加と正規雇用との格差拡大、過労死に至るような過重労働など、日本の労働環境に大きな変化が生じており、これを解決する手段として「働き方改革」、とくに労働生産性の向上と長時間労働の是正が喫緊の課題となっています。


日本の労働生産性は国際的に見ても低いとされており、OECD調査(2015年)では時間あたりの労働生産性は加盟35か国中22位、就業者1人あたりでは20位となっています(図1)。日本生産性本部の発表資料(2016年)によると、これは主要7か国(米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)では統計でさかのぼれる1970年以降最下位が続き、1人あたり、時間あたりとも米国の6割強の水準であるとのことです。

 

 

                             ※図1 労働生産性の国際比較

                           (公益財団法人 日本生産性本部、2016年発表)

 

 

ところで、「労働生産性向上」という言葉から受ける印象は、どのようなものでしょうか。よく誤解されがちなのですが、労働生産性向上という考え方は単に「同じ仕事をより短時間で(あるいは、コストをかけずに)終わらせること」という意味だけではなく、「1人あたり、あるいは時間あたりの付加価値をより大きくすること」という意味になります。


付加価値の定義も厳密にすると複雑になってしまうのですが、ざっくりと「利益+人件費」と考えてかまいませんので、高く売れるサービスや商品を作って利益を高めることや、人件費が高くなること即ち自分たちの給料が上がることも、労働生産性向上につながるのです。

 

 

 

では、ITエンジニアが勤務先から受け取っている報酬(給料、賃金)について考えていきたいと思います。この記事を読んでいる人の多くはIT業界に関わる方、もしくはIT業界に関心のある方だろうと思いますので、皆さんに向けて問いかけをさせていただきます。

 

「ITエンジニアが勤務先から受け取っている報酬は、何に対する対価なのか?」

 

「何を当たり前のことを、仕事に対する対価に決まっているじゃないか」と思った人は、もう少し掘り下げて考えてみてください。「仕事」という言葉を使っていますが、それは仕事を行うために費やした時間や労力(インプット)のことなのか、仕事の結果生み出された、ソースコードや設計書などの成果物(アウトプット)のことなのか、ここでは明確にしてほしいのです。

 

ここを突き詰めて考えると、理想や思いとしては成果物に対する評価であってほしいと考える一方、現実には時間や労力に対して対価が与えられる契約になっているという人が大半だと思います。正社員であれば勤務先との雇用契約の大半は労働時間が設定されているでしょうし、会社間の契約でも「人月いくら」のSES契約に代表されるように、1か月間の労働時間が対価の基準になっていることも多いです。

 

 

 

なぜ、多くの契約が「アウトプット(成果物)に対する対価」ではなく、「インプット(時間や労力)に対する対価」という形になっているのでしょうか。実は、現状の契約(個人と勤務先、または会社間の契約)がインプットに対する対価を重視しているのは、合理的な理由があります。


最大のメリットは対価の金額が安定することであり、仕事を始める前から収益額の見込みが立てられることといえるでしょう。また、成果物の価値が測定しづらいか、そもそも成果物が発生しない業務(例えば、人事や経理などのバックオフィス業務や、IT関連だとサーバ保守業務など)でも相応の対価を設定できることもメリットとしてあげることができます。

 

さらに、工場などの製造業では、作業手順が高度に標準化されており、その手順に従えば誰が作業しても一定の品質の製品(成果物)を一定の速さで製造することができます。つまり、時間や工数(インプット)と製品の質と量(成果物)は比例関係にあるため、「インプットに対する対価」と「アウトプットに対する対価」を明確に区別する必要はありません。インプットである作業時間は簡単に測定できますから、対価を設定するのに前者の基準を用いるのは、ある意味当然ともいえます。

 

そしてもちろん、インプットに対する対価にはデメリットもあります。とくにITエンジニアの業務ではインプットとアウトプットが比例しないことが大半ですし、また同じアウトプット(成果物)を出すのに必要なインプット(時間や労力)が、作業者のスキルによって何倍も、場合によっては何十倍以上も違ってきます。

 

この結果、実感されている人も多いかと思いますが「成果物に対する評価ではなく、投入した時間や労力に対する対価である」ことが、「スキルが高いほど、多くの成果物に対して安い対価となり、割に合わない」「与えられた時間や労力の枠をいっぱいに使って、最低限の成果を出せば良い」「指示された作業だけやっておけば十分で、それ以上のことは無駄だ」になり、あげくには「給料とは、勤務先に時間を拘束されることのガマン料だ」という考え方に陥ってしまうことで、成果物の質や量も、働く人のモチベーションも下がってしまうことになります。これは最大のデメリットであると私は考えています。

 

 

 

ここで少し視点を変えて、あなた自身が企業に勤めるITエンジニアであるとして、あなたが受け取る報酬がどこから出ているかを広い目で見てみます。法律や契約といった話は一旦脇に置いて、もっと本質的なところにフォーカスしたいです。

 

あなたは勤務先から、「一定量の作業を行うこと」への対価として、給料という形で報酬を受け取っています。では、勤務先の企業があなたに支払ったお金は、どこから出てきたものなのでしょうか? 当然ながら、企業が自らお金を印刷して使うことはできませんし、経営者や株主・資本家が自分たちの資産をあなたに無償で寄付しているわけでもない、ということはいうまでもないでしょう。

 

当たり前ですが、企業は他の企業や個人を顧客として、商品やサービスを提供し、顧客に便益(べんえき)を与えることの対価としてお金を受け取っています。そのお金の一部があなたに支払われる給料となりますし、商品やサービスの中にはあなたが作成した成果物も含まれています。

 

顧客からの対価が直接、全額あなたの手に渡れば話は分かりやすいのですが、図2で示したように勤務先の企業が間に入っていることと、企業は多くの従業員を抱え、多くの取引先とやり取りしていることが、自分の給料の出所を曖昧にしてしまっています。

 

とはいうものの、原理原則に立ち返れば、あなたの給料の元手は顧客から支払われたものであり、「あなたの成果物がもたらした便益」に対して報酬が支払われているということは理解できるかと思います。

 

 

 

ここまで、生産性向上は報酬の増加で実現できることと、ITエンジニアの報酬は、ITエンジニアが作成した成果物がもたらした「便益」に対する対価であることを説明しました。この2点を合わせれば、《顧客の便益を高めれば生産性が向上する》という結論を導くことができます。 補足として「便益」という、やや聞き慣れない単語について述べておきたいと思います。オンライン国語辞書「コトバンク」で補足します。

 

【便益】便益とはベネフィットのことをいう。ベネフィットの項参照。
【ベネフィット】ベネフィットとは製品やサービスを利用することで消費者が得られる有形、無形の価値のことをいう。

(※いずれも「コトバンク」内、「ブランド用語集」の解説)

 

すなわち、単に成果物として製品やサービスを作るだけではなく、顧客にその製品やサービスを使ってもらって、価値を感じてもらわなければ「便益をもたらした」とはいいません。 ITエンジニアにとっての働き方改革の第一歩は、《自分の業務が、顧客にどのような便益を与えるのか》という視点に気づくことだと考えています。

 

次回は、システム開発企業でよく見られる、開発と営業の意識の違いについてお伝えします。

 

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